夢奇房第13回公演『空とぶクジラと見えない空と』


――次に、今年初めて脚本に挑戦した工藤さんにいくつか質問をしてみたいと思います。
ズバリ、脚本を書く上での苦労はありますか?

工藤:苦労といったら…夢奇房特有の苦労がいっぱい(苦笑)

――(自分の経験を思い返しながら)たしかに、いろいろな事情がありますもんね…。

永山:この分かり合う感じが、すごいですね(笑)

工藤:ゆめき(※夢奇房)って特殊でね、みんながやりたいパフォーマンスを起点に、それらを組み込んでストーリーを考えるので、徐々に出来ていくんだけれども。

――うんうん。

工藤:今回はなるべく早く脚本を作りたいと思って、「この人はこの演技をやると言っていたから、こういう役柄がいいんじゃないか。細かいニュアンスはあとで調節すればいいや」というつもりでやっていたら、いざ書き始めて2か月後くらいにみんなが全然違うパフォーマンスを持ってきたりして。

――「…おや?」っと。

工藤:一応、直接会うなり電話するなりで全員にヒアリングをして書いたんだけど、練習に来て見ると「あれ?思ってたのと違うぞ?」と。

夢奇房第13回公演『空とぶクジラと見えない空と』

一同:(笑)

工藤:しかも、それぞれの要望を汲み取った上で自分の言いたいことも表現しないといけない。初めて脚本に取り組んでみて、夢奇房で舞台を作るってこういう難しさがあるんだと感じました。

――それはたしかにやってみないと分からないかも。

工藤:その分、自分の書いた脚本がだんだんと形になっていくのはすごく感動する。
まだ練習で全員揃うことも少ないし、個々のパフォーマンスも未完成(※インタビュー収録は2月の初旬)だけど、そんな状態の通し稽古でも俺、ちょっと泣きそうになったもん。

永山:ふふ。

工藤:嬉しくて!!こうやって出来上がっていくんだー!みたいな喜びが。

永山:大変だったぶん。

――苦労も喜びも、脚本家ならではですね。


――はじめちゃんはパフォーマーの立場から見て、脚本や自分の役をどのように解釈していますか?
ヒアリングの結果、こういう役がいいんじゃないかという提案を受けたんですよね。それでもストーリーの都合上、100%自分の希望通りにいかないこともあるかと思いますが。

永山:そうですね…だいぶやりやすいです。

――お、やりやすい?

永山:工藤さんがヒアリングしてくれて、当初自分が話していた方向性と大きくずれるようなこともなく、そのまま…。むしろ、かなりやりやすい役を頂いたなと。

――へえ、のびのびとできそうな感じなんですね。

工藤:ペークルは、今回の脚本では数少ない、最初のイメージにはまったキャラクターです。雲の上の魔法使いという設定は最初からブレていないんです。唯一、どうしようかなと思ったのがセリフくらい。

永山:そうですね、そこの希望は…。

――あ、セリフが欲しいというのははじめちゃんからリクエストしたんだ。

工藤:一言二言だけど、彼が登場するその部分ならストーリー全体でめっちゃ練習しないといけないわけでもないし、掛け合いの相手がいればできるし。

永山:自分の出席状況も考慮してもらって。

工藤:セリフの量で言っても、練習回数が少なくてもまあまあカバーできる。

――じゃあ、本当に色々な事情と計算の上で成り立っている脚本なんですね。

永山:はい、希望を汲んでくれた内容になっています。


――もう一つ、脚本家としての質問なのですが、ストーリーの中で「ここを見てほしい!」という見せ場は?

工藤:あ~!!なるほどねえ。まあ、いっぱいあるんだけど…、見せ場だと思って作ったところはいっぱいあるし、役者の動きがついて作られていく中で「あ、ここ見せ場だな」と再認識したところもあるんだけど…。

――うんうん。

工藤:パフォーマーだとか、小説だとか、何かしらモノを作ることをしている人に…やっぱりあすこだねえ、ほら。

――創作に苦しんで、思い悩む場面ですね。

工藤:自分はお笑いから始まり、落語もしたし、大道芸もやって、脚本もやって、パフォーマーもやって、作る側の苦しみを非常に知っているわけで。同じような悩みを持っている人はいるんじゃないかと。
その中で、俺が「これが一番大事!」と見つけた拠りどころというか、今時点での答えが、あのあたりのセリフに全部入ってる。

――工藤さん自身の実感から出てきたということですね。

工藤:経験して、苦労してきたものが詰め込まれてる。どうしても人に見せるとなると、こうやったら変だと思われるんじゃないかとか、これをやるとこの層の人たちからは邪道だと思われるんじゃないかとか。

永山:誰に、ということを意識しちゃうと。

工藤:そんなふうに色々な人の目を気にすると見失っちゃう。自分はなんでこれをやってみたかったか。なんでこれを作ろうとしようと思ったか。そこに陥ると、納得するまでに時間がかかる。

――あらゆるジレンマに囚われてしまいますからね。

工藤:だから、初心に戻るのって大事だなって。自分が最初にやろうとしたその信念を大事にする。そういうことだね。


――では、今度ははじめちゃんに。パフォーマンスの中で見てほしいこだわりのポイントは?

夢奇房第13回公演『空とぶクジラと見えない空と』

永山:まずキャラクターのことでいうと…たしかに見せ場を作っているところもあるんですけど、素で、というか。雲や雪に囲まれて、自然な状態で無理なくのびのびと遊んでいるように見えたらいいなというのが狙いとしてあります。

――はじめちゃんらしい演技ということですね。

永山:で、ジャグリングとしては。もう1人、ボールの出演者が…。

――ボールの出演者がね!

永山:(ちょっと意味深に)タカシ!さんという…。

工藤:社会人的な。

永山:社会人。

工藤:ナイト的な。

永山:ナイト。

――ナイト的な(笑)(※註:タカシさんは「社会人ナイト」というジャグリングカンパニーの一員)

永山:同じジャグリングの道具で出演している以上、やはり表現の方向性を分ける必要があると思うので。少ない数のボールで巧みな、巧みな…。

――おおっ!(にやり)巧みな、ね!

工藤:巧みな。

永山:(!)巧みなジャグリングをしている、タカシさん…に対して、のびのびしているということにもつながるんですが、わかりやすいボールの数の多さですごいなとか楽しいなとか思ってもらえれば。

――数が多いと、見た目のインパクトが大きいかもしれませんね。

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